YBa2Cu3O7-δ薄膜中の(001)小傾角粒界における磁界中磁束フロー損失の可視化
Visualization of in-field flux flow dissipation at a low angle YBa2Cu3O7-d (001) tilt grain boundary

木須 隆暢 , MATSEKH Arkadiy , 三井 大輔 , 井上 昌睦 (九大);塩原 融 (SRL)
kiss*sc.kyushu-u.ac.jp


Abstract:  高温超伝導線材の高品質化のために、小傾角粒界における電流制限機構の解明は極めて重要である。高温超伝導体の結晶粒界は、超伝導電子対のd波対称性のため、粒界傾角の増大に伴い、自己磁界中の臨界電流密度Jcが低下することが知られている。しかしながら、高磁界下における粒界Jcの決定機構については十分に解明されていないのが現状である。本研究では、 (001)-6° 傾角を有するバイクリスタル基板上にPLD法によりエピタキシャル成長したYBCO薄膜を用い、四端子法によって粒間-、粒内-Jcの外部磁界依存性を調べると共に、高磁界対応型低温レーザ走査顕微鏡を用い、損失分布の空間変化を可視化することに成功した。自己磁界中の粒間-Jcは粒内の値に比べ約一桁小さいのに対し、外部磁界の増大に伴い、両者のJc値の差は減少し、やがてマージする。低磁界中において、発生損失は粒界に局在する一方、クロスオーバ磁界以上の外部磁界下においては、空間的に均一な磁束フロー状態へと遷移する。損失分布の測定結果は、クロスオーバ磁界以上で、粒間-Jcと粒内-Jcの大きさは逆転するわけではなく、同一の値となることを示している。本測定法は、高磁界化における結晶粒界の電流輸送特性を明らかにする上に置いて、極めて有用であると考えられる。