Gurevich-Cooleyの粒界ピンニングモデルの一軸異方的超伝導への拡張 -Ba122線材におけるIcの磁場ヒステリシスの理解に向けて-

An Extension of Gurevich-Cooley's Grain-Boundary Pinning Model to Uniaxial Superconductors -Toward Understanding Magnetic-Field Hysteresis of Ic in Ba122 Tapes-


岡田 達典 (九工大)


Abstract:(Ba,K)Fe2As2(Ba122)線材において、Icの印加磁場H依存性に顕著なヒステリシスが現れる。特に、単調な減磁過程Ic(H_dec)とは対称的に、増磁過程では磁場増大に伴ってIc(H_inc)が増大する挙動が見られる[M.Bonura et al., SuST 33 (2020) 095008.など]。このようなIc(H_inc)はGurevichとCooley[A.Gurevich and L.D. Cooley, PRB 50 (1994) 13563.]によって提案された「弱く粒界ピン止めされた渦糸と強く粒内ピン止めされた渦糸間の相互作用」で期待される振る舞いと似ている。
Ba122線材では、Icの磁場ヒステリシス挙動が磁場の印加角度に依存する[J.Luo et al., IEEE-TAS 33 (2023) 8200405.]ことも確認されている。本研究では、角度依存するIcの磁場ヒステリシス挙動が有効質量の異方性に起因すると考え、Gurevich-Cooleyモデルに一軸異方性を取り入れる拡張を行った。その結果、定量性には詳細な考察を要するものの、観測されたIc(H)を拡張Gurevich-Cooleyモデルで凡そ説明できた。