多重極展開を用いたNI REBCOマグネットの局所的相互インダクタンス計算の高速化

Fast Computation of Local Mutual Inductances of NI REBCO Magnets Using Multipole Expansion


榊原 里樹 (北大); 石山 敦士 (早大); 野口 聡 (北大)


Abstract: レアアース系超電導体(Rare-Earth Barium Copper Oxide: REBCO)は高温高磁場下でも大きな電流を流すことができるという優れた超電導特性から,小型核融合炉など高磁場装置への応用が期待されている.2011年にはREBCOパンケーキコイルへの無絶縁(No-Insulation)巻線技術が提案され,REBCOマグネットの熱的安定性を飛躍的に向上させることに成功した.
 NI REBCOマグネットは様々な応用が求められているが,遮蔽電流によって誘起される磁場や,過度な機械的応力による臨界電流の低下など,解決すべき問題が残存している.このような問題を調査するためには,コイル内の局所的な現象変化が,コイル全体に及ぼす影響を調べる必要がある.部分要素等価回路モデル(Partial Element Equivalent Circuit: PEEC)モデルはコイル内の局所的な抵抗やインダクタンスを考慮したモデルであり,局所的電磁現象をシミュレーションするために広く使用されている.
 PEECモデルを用いたマグネットの解析には,局所的な相互インダクタンスを多数求める必要があるが,この計算量は要素数の増加に伴い指数的に増加する.さらに,REBCOパンケーキコイルのインダクタンス値は,コイルが変形するたびに再計算する必要がある.このような理由から,局所的相互インダクタンス算出の高速化が求められている.
 本発表では,多重極展開を利用してNI REBCOマグネットの相互インダクタンス計算を高速化する手法を示し,計算時間および計算精度の観点からこの手法の有用性を確認する.