Theory of kinetic inductance under a bias DC
久保 毅幸 (KEK)
Abstract:本発表では、ミクロな理論に基づく力学インダクタンスのバイアス電流依存の計算結果を報告する。これまで、バイアス電流下の力学インダクタンスは、現象論的仮定、すなわち電磁場とともに超流動密度が振動する「遅い実験シナリオ」または超流動密度が変化しない「早い実験シナリオ」にBCS理論やGL理論を組み合わせることで計算されてきたが、本研究では、既によく確立された非平衡超伝導理論であるKeldysh-Eilenberger形式を用いることで、現象論的仮定を導入することなくミクロな理論のみに基づいて計算を行った。その結果、電磁場の周波数に関係なく「遅い実験シナリオ」のみが正当であり、「早い実験シナリオ」が正しくないことが示された。これは、バイアス電流下の電磁応答では、ヒッグスモード(超流動密度の振動)が必ず寄与するという良く知られた事実からの帰結である。本研究は、任意の温度、周波数、不純物濃度におけるバイアス電流下の力学インダクタンスをミクロな理論に基づいて計算するための枠組みを初めて提供するものである。arXiv:2408.00334