キラルな結晶構造を有するTaGe2のAl置換による超伝導発現

Superconductivity in Al-substituted TaGe2 with a chiral crystal structure


小泉 太護, 木佐貫 晋吾, 門田 健太, 高阪 勇輔, 宍戸 寛明, 戸川 欣彦 (大阪公立大)


Abstract:我々はキラルな結晶構造を有する超伝導体(キラル超伝導体)の探索を進めている。一般に、空間反転対称性がない結晶構造を持つ超伝導体はクーパー対にスピン三重項成分が混ざることから、磁場に対して強い超伝導特性を示すことが知られている。空間反転対称性に加えて鏡映対称性を失ったキラルな結晶構造を形成する物質(キラル物質)では、その物性がさらに豊かになる。例えば、結晶構造のキラリティを反映して、非相反輸送現象や電流下でのスピン偏極状態が現れることが挙げられる。つまり、キラル超伝導体では超伝導とスピン偏極が共存する可能性があり、とても興味深い研究対象である。しかしながら、キラル超伝導体の報告は数少なくその特性の理解が進んでおらず、系統的な研究に向けて物質群を増やす必要がある。本研究では、キラルな結晶構造であるC40構造を持つTaGe2に着目し、Ge4+をAl3+で置換するキャリア制御によるTaAlxGe2-xの超伝導化を試みた。x = 0から0.1において磁化測定と電気抵抗測定では超伝導転移が観察できなかったが、x = 0.2から0.4ではマイスナーシグナルと零抵抗が観察された。この範囲ではxの増加に伴って超伝導転移温度Tcが2.0 Kから2.2 Kに増加するが、x = 0.5になると超伝導が消失した。格子定数のAl置換依存性を調べたところ、x = 0.5まではa軸とc軸の格子定数が系統的に減少したが、それを超えるとc軸の格子定数が増加に転じた。超伝導の発現とc軸長には相関があると考えられる。