集束イオンビーム法によるYBa2Cu3O7-δプローブの作製と評価

Fabrication and evaluation of YBa2Cu3O7-δ probes by the focused ion beam method


大西 漠, 江畑 敦志, 大西 理志, 林 幹二, 田中 三郎 (豊橋技科大); 宮戸 祐治 (龍谷大); 廣芝 伸哉 (大工大); 有吉 誠一郎 (豊橋技科大)


Abstract:走査型トンネル顕微鏡(STM)とは、鋭く尖った探針(プローブ)を導電性試料に接近させてトンネル電流を検出し、試料表面を観察する顕微鏡である。従来のプローブにはタングステンなどの常伝導金属が用いられてきたが、高温超伝導(HTS)プローブに関する研究は未開拓である。そこで、プローブ材料にc軸配向YBa2Cu3O7-δ(YBCO)バルクを採用し、HTSトンネル接合の創製を目的として研究開発を行った。まず、プローブの作製では集束イオンビーム装置などを用いてバルクからプローブ形状へと加工・最適化した結果、尖端曲率半径334 nmという鋭利な形状を実現した。また、評価ではX線回折や抵抗‐温度曲線の計測によってバルクの物性を把握した。さらに、HTSトンネル接合創製への第一歩として、YBCOプローブを原子間力顕微鏡に搭載した結果、ピッチ5 µm、高さ100 nmのパターンを明瞭に識別した。以上より、YBCOプローブが試料表面の凹凸を計測するために十分な空間分解能を有することを実証した。従来のプローブ材料には常伝導金属や半導体などが用いられてきたが、本研究のプローブは初の超伝導セラミック製と位置付けることができる。