陽子線治療向け超電導サイクロトロンにおける等時性磁場形成と遮蔽電流誘起磁場の影響

Adjustment of magnetic field distribution in a superconducting isochronous cyclotron for proton therapy


江原 悠太, 吉田 潤, 筒井 裕士, 中島 秀, 鶴留 武尚, 宮下 拓也 (住重)


Abstract:近年、陽子線治療向け超電導AVFサイクロトロンSC230が開発された。AVFサイクロトロンは等時性サイクロトロンの一種であり、粒子の軌道面の周平均磁場が半径とともにローレンツ因子に比例して磁束密度が大きくなるような磁場分布(等時性磁場)を形成することで、相対論的効果による等時性からのずれを補償している。高い加速効率を実現するためには理想的な等時性磁場を形成することが望まれるが、超電導マグネットと磁極を組み上げた時点では、製作や材料特性の不確かさなどにより磁場分布は理想的な分布に対して差異をもつ。この磁場の偏差は、粒子の軌道を歪め、加速電場と粒子周回との間に位相差を生み、等時性を乱してしまう。SC230においては、高い加速効率を実現するため、製造の過程で磁場分布の測定と調整が実施された。また、超電導コイル内の超電導体における遮蔽電流によって生じる磁場についても等時性を乱す要因になる。遮蔽電流誘起磁場の計算とその影響が検討され、実験によって妥当性が確認された。本発表では、SC230にて実施された磁場測定と調整を含めた磁場分布の形成、遮蔽電流の影響について結果と併せて報告する。