バルクピンのない第二種超伝導体における縦磁場中の臨界電流

Critical currents of type-II superconductors without bulk pinning exposed to longitudinal magnetic fields


馬渡 康徳 (産総研)


Abstract:対破壊電流密度は、超伝導状態で流すことのできる電流密度の理論限界であり、Ginzburg-Landau (GL) 理論の論文にすでにその記述がある。その論文では、通電電流と印加磁場が平行である「縦磁場中」の超伝導薄膜における臨界電流について解析されており、ゼロ磁場中の薄膜における臨界電流密度は対破壊電流密度に達することが導かれている。しかし、コヒーレンス長ξが磁場侵入長λより十分大きい極端な第一種超伝導薄膜(ξ≫λ)が仮定されており、高い臨界電流密度をもつ多くの第二種超伝導体の場合の妥当性は明らかではない。

本研究では、極端な第二種超伝導厚膜(ξ≪λ)を想定して、GL 理論を基にバルクピンのない磁場中の臨界電流について理論解析を行った。横磁場の場合に比べて縦磁場の場合の臨界電流は大きく、また磁場方向によって臨界電流の磁場依存性が大きく異なることを明らかにした。