(RE)BCO 薄膜の H//c 付近で磁界角度に依存しない Jc 特性 (2) —c軸相関ナノロッドピンで低温度の場合

Field-angle independent Jc properties near H//c in (RE)BCO thin films (2) —in the case of c-axis-correlated nanorod pins at low temperatures


山崎 裕文 (産総研)


Abstract:(RE)BCO 薄膜に導入したナノロッドはc軸相関ピンであり、臨界電流密度の磁界角度依存性 Jc(θ) において、77 K 等の高温度において大きな Jc(θ) ピークを示す(θ:磁界方向とc軸のなす角)。しかし、30 K 以下の低温度ではc軸方向の Jc(θ) ピークが目立たなくなり、4.2 K ではほとんど出現しない。従来、この現象は、低温度においてのみ有効な点欠陥によるピンニングに帰されていた。しかし、最近観測された、77 K, 3 T (//c) での Jc と30 K, 3 T での Jc との良い相関は、この解釈と矛盾する。今回、イントリンシック・ピンニングに基づく新しい解釈を提案する。4.2 K などの低温度では、イントリンシック・ピンニングが強く働くので、傾いた磁束線は階段状に侵入する。そして、磁束ピン止め現象を ab 平面に平行な磁束部分とc軸に平行な磁束部分とに分離でき、後者のみで Jc(θ) が決まる。Jc(H, θ) はc軸に平行な磁束密度成分 Bcosθ で決まるため、θの増加とともに Bcosθ が低減して Jc が向上し、c軸方向付近の Jc(θ) ピークが消失する。