超流動ヘリウムを用いた超冷中性子源の開発(1)UCN生成に関する物理と低温全体設計

Development of Ultra Cold Neutron Source using Superfluid Helium (1) Discussions of Ultra Cold Neutron Production and Cryogenics for the Source


川崎 真介, 岡村 崇弘 (KEK)


Abstract:超冷中性子とは非常に低エネルギーの中性子のことで、物質表面で全反射するという性質を持つ。この特徴を生かし、超冷中性子は中性子電気双極子モーメント探索実験、中性子寿命測定、重力実験など様々な基礎物理実験に用いられている。
超冷中性子は原子炉や核破砕中性子源で生成される高エネルギーの中性子を段階的に減速することで得られる。重水や重水素などの中性子減速材で弾性散乱によってエネルギーを失った中性子を超流動ヘリウムへ導く。超流動ヘリウム中のフォノンを励起することによって中性子はほぼすべての運動エネルギーを失い、超冷中性子となる。この時、超冷中性子がフォノンよりエネルギーを得てしまう逆反応を抑制するために超流動ヘリウム温度は1.0 K程度の低温に保持しなければならない。超流動ヘリウムは中性子源からの放射線発熱さらされており、この冷却機構が重要となる。
本講演では超冷中性子生成原理とそのために必要な低温機構の設計について報告する。