ITER TFコイルにおける常温下でのジョイント抵抗検査手法の開発

New inspection method of joint resistance at room temperature for ITER TF Coil


梶谷 秀樹, 辺見 努, 山根 実, 清水 辰也, 宇野 康弘, 中本 美緒, 松井 邦浩, 小泉 徳潔 (量子機構)


Abstract: ITER TFコイルでは、ジョイント抵抗(RJ)を、数ナノ オームの低抵抗で実現する必要がある。しかし、実機TFコイルのジョイント抵抗を低温にて測定することは、そのTFコイルのサイズや質量の大きさから、巨大な装置が必要となるため、難しい。そこで、本研究では、RJを常温にて簡易的に評価することのできるジョイント部の検査手法を開発した。
RJの大きさは、主に撚線とジョイントボックス銅スリーブ間の接触抵抗(Rc)とジョイント部同士を接合する半田面の抵抗(Rsol)によって決まる。このうち、Rsolについては、製造過程における適切なプロセス管理や目視検査によって、品質を確認することできるが、Rcについては、それが難しい。そこで、ここでは、Rcを評価することに着目した。
Rcは、撚線と銅スリーブ間の電流染込長(CPL)に影響を与える。そのため、著者は、製造したジョイント部の品質に問題がない場合(つまり、Rcが十分低い場合)は、CPLに再現性があり、一方で、何かしらの異常や欠陥が存在する場合は、CPLに変化が生じるのではないかと考えた。このような現象を観測するため、銅スリーブの電圧分布を測定することのできる測定システムを開発した。その結果、実機TFコイルのジョイント部の測定では、測定した全てのジョイント部において、CPLの再現性を確認することができた。一方で、ジョイント内部の状態が変化したサンプルにおいては、それから大きく逸脱したCPLが観測された。このように、開発した本検査法を用いれば、ジョイント内部の状態を感度良く検知できるため、Rcの品質を検査することが可能となる。