Vapor-Liquid-Solid成長法を用いて作製したSmBa2Cu3Oy線材の成膜速度と超伝導特性

Deposition Rate and Superconducting Properties of SmBa2Cu3Oy Coated Conductors Fabricated by Vapor-Liquid-Solid Growth Technique.


吉田 隆, 伊東 智寛, 田尻 修也, 土屋 雄司, 一野 祐亮 (名大)


Abstract:超伝導線材を作製する際、作製コストを抑えるため高い成膜速度、かつ高い超伝導特性を有する線材を作製することが必要不可欠である。従来のPulsed laser deposition(PLD)法を用いてSmBa2Cu3Oy(Sm123)線材を作製する際、成膜速度を向上させるためにレーザー発振エネルギーを増大させると、a軸配向粒混在率が増加し、超伝導特性が低下してしまう。このような問題点を改善するべく、我々は通常のPLD法に代わりVapor-Liquid-Solid(VLS)成長法を用いて、IBAD-MgOテープ上にSm123線材の作製を行った。このVLS成長法は気相法でありながら、液相を介して結晶成長を行い薄膜作製する方法である。本研究ではこのVLS成長法を用いて、PLD法では実現できない高い成膜速度、高い超伝導特性を有した線材の作製を行った。その結果、まずPLD法で作製したSm123線材はレーザー発振エネルギーを1.9 J/cm2まで増大させるとa軸配向粒混在率が81 %まで上昇し、臨界温度Tcは88.9 Kに低下した。一方、VLS成長法で作製したSm123線材はレーザー発振エネルギーを2.4 J/cm2まで増大させてもa軸配向粒混在率は増加せず、Tcも91.6 Kと高い値を示した。また、成膜速度においては、良好なc軸配向線材を得るための最適条件としてPLD法が1.4 J/cm2において24.9 nm/minであるのに対し、VLS成長法は2.4 J/cm2において137.3 nm/minである。当日は、レーザー発振エネルギーを変化させ、成膜速度の変化、また各超伝導特性について報告する。