Development of magnetic field control system using the multiple racetrack HTS magnets for MDDS
中島 淳成, 志摩 翔太, 眞田 尚幸, 平野 亮磨, 中川 拓弥, 金 錫範 （岡山大）
Abstract:近年の創薬技術の進歩は目覚ましく，その症状に有用な薬物を見いだすことが容易となった．また，ほとんどの薬物は本来の効能以外に副作用を有している．そこで，体内の薬物分布を，量的・空間的・時間的にコントロールすることで副作用を軽減し，高効率な薬物治療を行う技術が注目されている．このような薬物を体内で精密にコントロールし薬物治療の最適化を実現する技術・方法論を薬物配送システム（Drug Delivery System : DDS）という．従来のDDSでは，薬物動態を制御するために様々な微粒子に薬剤を抱合するといった薬物の機能化に重点を置いたものが一般的である．そこで，我々は，物理的外力として磁気牽引力を用いて薬物を目的の部位に誘導することで，これまでのDDSより効率の良い薬物治療が可能である磁気誘導DDS（Magnetic Drug Delivery System :MDDS）に注目し研究を行っている．MDDSは，精密に制御された磁場を印加することで薬物を目的の部位に誘導し，高濃度に集積させることができる．また，磁力の及ばない他の部位への薬物の蓄積や副作用の軽減が期待できる．これまでに，超電導バルク体を使用することで，ナノ磁性体粒子を蓄積できる強度の磁場を発生できることが確認されている．しかし，超電導バルク体は発生磁場を変化することができないため，精密な磁場制御が困難である．そこで，我々は超電導コイルを利用することで超電導バルク体のこの短所を補えると考えた．複数の超電導コイルと磁性体を組み合わせることで、柔軟な磁場制御が可能であると考えている．本研究では，複数の超電導レーストラックコイルを並列に配置し，各コイルの通電電流を制御することで，長手方向に向かって磁気勾配を作る新しいMDDS用マグネットの開発を目的として行った．MDDSに必要な磁場形状，磁場強度，磁気勾配を発生させるために，超電導レーストラックコイルにおける臨界電流の増加を図るための電磁場解析を行った．具体的には，磁性体を超電導レーストラックコイルの最適箇所に配置し，コイルに侵入する磁束を軽減することで臨界電流の増加を試みた．