超1GHz NMRの開発(7)
膜タンパク質の固体NMRにおける高磁場の効果

Development of a beyond 1 GHz NMR spectrometer (7)
- Effect of high magnetic field on solid-state NMR of membrane proteins


前田 秀明, 山崎 俊夫 (理研); 端 健二郎, 出口 建三, 清水 禎 (NIMS)


Abstract:膜タンパク質は細胞膜にあり細胞の内外をつなげる重要なタンパク質であり、主要な薬剤の50%以上がこれらをターゲットとしている。しかしながら、脂質上の膜タンパク質を結晶化するのは難しくX線による解析には限界があった。一方、固体NMRを用いれば、脂質2重膜中での膜タンパク質の構造や運動性を解析できる。しかしながら、従来の固体NMRでは感度や分解能が低いことが問題であり向上が期待されていた。今回、膜タンパク質の一種で水のチャンネルとなるAquaporin Zについて、1020MHzNMRによるNMR計測を行い、これを既存の700MHzNMR(永久電流)による結果と比較したところ、顕著な計測分解能の向上が得られた。この結果は、高磁場による固体NMRの有効性を強く明示するものであるので、報告する。本研究は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「先端計測分析技術・機器開発プログラム」の支援によって行われた。