超1GHz NMRの開発(1) プロジェクト総括と強磁場NMRマグネット展望

Development of 1020 MHz NMR System (1)


清水 禎, 端 健二郎, 大木 忍, 後藤 敦, 酒井 修二, 出口 健三, 松本 真治, 野口 隆志, 西島 元 (NIMS); 前田 秀明, 柳澤 吉紀, 高橋 雅人, 山崎 俊夫, 西山 裕介, 井口 聖威也 (理研); 田中 良二, 根本 貴宏, 末松 浩人 (JEOL RESONANCE); 三木 孝史, 斉藤 一功 (神戸製鋼)


Abstract:NMR装置はタンパク質などの生体高分子の立体構造解析、有機化学や材料研究など幅広い分野で使用されています。特に新薬創製のためには欠かすことのできない装置の一つです。新薬の開発にはより速く正確にタンパク質の構造を決定することが重要であり、このためにはNMR装置の性能向上が必要不可欠です。そのような中、NMR装置においては磁場強度が重要な指標の一つとなっており、磁場1000MHzを超える熾烈な開発競争が行われてきました。かねてから、高温超伝導技術を用いれば1000MHzを超えられると考えられていましたが、高温超伝導体は割れやすく加工しにくいなど様々な課題があり世界的にも長期間実現には至っていませんでした。
本研究チームは、1988年にNIMSで開発された高温超伝導体を線材化するなど複数の新技術の開発を経て、NMR装置として世界最高磁場となる1020MHzを達成しました。構想から20年。東日本大震災で被った完成直前の損壊による開発中断、世界的なヘリウム供給危機、さらにはチームリーダーの急死など、度重なる苦難を乗り越えた末、建設開始後8年を経ての目標達成に至りました。
超高磁場NMRは、構造生物学、分析化学、材料工学などの諸分野に大きく貢献することが期待されます。また、NMRは磁場発生装置の中では最も精密な性能が要求される装置であり、NMR開発で培われた高温超伝導技術は、MRI、核融合、リニアモーターカー、超伝導送電線などさまざまな先端機器に応用可能です。