高品質 Bi2212 エピタキシャル薄膜におけるナノ構造欠陥と臨界電流密度

Nanostructural defects and critical current densities in high-quality Bi2212 epitaxial thin films


山崎 裕文 (産総研); 遠藤 和弘 (金沢工大)


Abstract:前々回、単結晶基板上に作製した高品質なc軸配向 Bi2212 薄膜について、透過電子顕微鏡観察で観測された、積層欠陥周辺部や双晶界面における転位ループや逆位相境界が主要なピンであると報告した。今回、低温度で 10^6 A/cm2 以上の高い臨界電流密度 Jc が観測された2つの薄膜A、Bについて磁界中の Jc を比較した。低温度域(≤20 K)や低磁界(≤0.1 T)中で薄膜A(~110 nm)より高い Jc を示す薄膜B(~280 nm)が、中高温度域の高磁界中ではAより低い Jc を示す、と言う興味深いクロスオーバー現象が観測された。n値は、低磁界領域を除いて一般に薄膜Bの方が低いため、熱的に活性化された磁束運動の効果であると考えられる。透過電顕で観測されるナノ欠陥の濃度は薄膜Bの方が高く、それが低温度域での高い Jc をもたらすが、熱励起磁束運動も起こしやすいことが示唆された。