高磁場耐性HTS-SQUIDの開発 -SQUID特性に関する研究-

Development of robust HTS-SQUID in magnetic field - Characteristics -


廿日出 好 (近畿大); 鈴木 健文, 田中 三郎 (豊橋技科大)


Abstract:我々は,非破壊検査の実用化のため,通常磁場環境中でも安定動作するHTS-SQUIDの開発を行ってきた.今回,通常環境での冷却中にHTS薄膜に磁束がトラップされる現象を抑制するため,薄膜線幅が最大5 mとなるメッシュ構造を有するHTS-SQUIDマグネトメータを設計し,SrTiO3(STO)バイクリスタル基板上に試作した.また,SQUIDに地磁気が鎖交するとSQUIDのジョセフソン接合の臨界電流が変化して安定動作が困難になるため,同様のメッシュ構造をもつHTS薄膜を通常のSTO基板上に作成し,超伝導シールドとしてフリップチップ構造でSQUID上に積層した.このHTS-SQUIDマグネトメータの特性をDCおよびAC磁場中で測定した.SQUIDに印加するDC磁場をゼロから増加していったとき,SQUIDの臨界電流は地磁気の約3倍となる約140 Tの磁場が印可されるまで変化しなかった.これは積層したHTS薄膜のマイスナー効果により,ジョセフソン接合に鎖交する磁束が排除されたためと考えられる.一方,10 MHzのAC磁場がSQUIDに印可された場合,SQUIDの変調深さやノイズレベルは,薄膜が積層された場合,積層をしていないSQUIDと比較して,より小さな磁場強度で特性の劣化が見られた.比較のために作製したメッシュのないHTS薄膜を積層した場合,特性の劣化が最も少なかった.これは積層薄膜のピン止め力によるものと考えられる.最後にメッシュ入りHTS薄膜を積層したSQUIDを小型クライオスタットにマウントし,地磁気を切るようにクライオスタットを一回転させ,回転中のSQUIDの臨界電流を計測した.この結果,HTS薄膜積層のないSQUIDの臨界電流は回転中に周期的に変化したが,積層したSQUIDでは臨界電流の変化が抑制されることを示した.