溶融水酸化物を用いたREBCOエピタキシャル膜の低温成膜

Low temperature fabrication of REBCO epitaxial film by using molten hydroxide


舩木 修平, 山田 容士, 宮地 優悟, 奥西 亮太 (島根大)


Abstract: 磁場中における超伝導特性の優れたREBCO膜は,超伝導マグネットを実現する有望な材料として期待が高く,多くの研究が実施されてきている.しかしながら,REBCO膜の製造方法の主流であるPLD,CVDなどの気相成長法やMOD法では高い成膜温度が必要であり,これに起因して基材とREBCO層との反応を抑制する複数の中間層を設けなければならず,非常に複雑な製造プロセスとなっている.このようにREBCOを用いて線材などを製造するためには,簡便な方法で,かつ,低温で製造できる技術の確立が必要である.
これまで我々は水酸化物を溶剤に用いた溶融水酸化物法という手法を提案し,REBCOを低温で形成することに成功した.そして,作製時の酸素濃度,加熱温度を変化させることで,生成相をREBa2Cu3Oy (RE123),REBa2Cu4O8 (RE124),RE2Ba4Cu7Oz (RE247)相に制御できることを確認してきた.本研究では,溶融水酸化物法による低温製造技術がREBCO線材応用へ適用可能かどうか明らかにするために,水酸化カリウム(KOH)溶剤を用いた溶融水酸化物法でREBCO膜の作製を試み,その配向性及び超伝導特性を検討した.
1気圧大気中,650˚Cで作製することで,NdGaO3 (001)単結晶基板上に2軸配向したY124膜が成長することが確認された.また,窒素気流(減圧酸素)中で作製することでY123膜が成長し,650˚Cという比較的低い温度で作製したY123膜はTc ≈ 90 Kを示した.これらの結果から,溶融水酸化物法は,REBCO線材の製造温度の低温化が可能な手法として期待できる.