中性子照射によるNb薄板内のトラップ量子化磁束挙動の変化

Influence of Neutron Irradiation on Trapped Fluxoids in Nb Thin Plates


井上 昌睦, 金 グラシア, 東川 甲平, 木須 隆暢, 出光 一哉 (九大); 西村 新 (ITER-IT); 落合 謙太郎, 今野 力 (原子力機構); 今川 信作 (NIFS)


Abstract: 中性子照射実験と照射試料の受入・評価の共同研究体制を整えると共に、原子力機構FNSにおいて14MeVの中性子照射を行ったNb薄板試料について、超伝導特性に関する精密測定を実施し、SQUID磁気顕微鏡による量子化磁束の観察ならびに磁化測定による磁場中臨界電流密度Jcの評価を開始した。その結果、マクロスケールのJcに大きな変化が見られない照射初期段階においても、量子化磁束挙動には明らかに変化が認められ、量子化磁束は照射後により安定的にピン止めされる事を量子化磁束の直接観察とその統計分布の解析によってはじめて明らかとした。この事は、中性子照射により多数の微小欠陥が結晶粒内に導入され、磁束のピンニングに寄与している事を示唆している。一方、量子化磁束そのものの磁束プロファイルに着目した評価の結果、磁場侵入長の温度依存性及びTcにも変化は見られなかった。この事から、マトリクスの超伝導特性の劣化生じていないと判断できる。