磁場中の海水の電気分解のイオンモデルを用いた数値シミュレーション

Numerical simulation of brine electrolysis in magnetic fields using an ion model.


岩田 祐樹, 小俵 翔也, 赤澤 輝彦, 岩本 雄二, 梅田 民樹 (神戸大)


Abstract:海水に磁場を印可し磁場と垂直な方向に通電を行うと、海水には磁気力が働くが、海水中の油には磁気力は働かない。この違いを利用して海水から油を分離する装置(MHD油水分離装置)が考案されている。これまでのMHD油水分離装置に関する理論的研究では、海水を単純な導電性の流体として扱うことが多かった。しかし、海水の電気伝導度はイオン濃度によること、拡散電流に対しては磁気力が働かないことなどから、イオンの流れに関する研究が必要となってくる。そこで本研究ではイオンモデルを用い、電流とイオンについては修正Nernst-Planck方程式、海水の流れについてはNavier-Stokes方程式を用いてMHD油水分離装置の数値シミュレーションを行った。その結果、(i)電極近傍でイオン濃度に大きな偏りが生じる、(ii)拡散電流は負極側の電極近傍で大きくなる、(iii)磁気力により海水中に生じた渦がイオン濃度や拡散電流の分布に影響を与える、ことが分かった。通常の条件では、拡散電流は全電流の数%程度と小さいが、流速を極端に遅くするとドリフト電流と同程度の大きさになることがあり、装置の効率に影響する可能性がある。