Effect of annealing treatments on the superconducting properties of TFA-MOD (Y,Gd)BCO coated conductors
江幡 勇紀, 小峯 拓也, 三浦 正志 （成蹊大）； 高木 祐司, 中岡 晃一, 吉積 正晃, 和泉 輝郎, 塩原 融 （SRL）
Abstract:Trifluoro Acetates Metal Organic Deposition(TFA-MOD)法により作製したY0.77Gd0.23Ba2Cu3O7-δ
(YGdBCO)線材はYB2Cu3O7-δ(YBCO)線材に比べ、安価な液体窒素(77 K)下においても高い超伝導特性を有するため特に期待されている。しかし、応用のためには更なる臨界電流密度(Jc) の向上が必要であり、そのための具体的な方法として酸素アニールによるキャリア制御(酸素量の最適化)がある。酸素アニールは銅酸化物超伝導体を最適酸素量に調整するために重要なプロセスであり、YGdBCO線材をキャリア制御することで超伝導特性が向上すると考えられる。しかし現状ではYGdBCO線材の最適アニール条件は明らかにされていない。本研究では、Yの一部をGdに置換したYGdBCO線材を作製し、酸素アニール温度を300 ℃〜500 ℃と条件を変えて酸素アニールすることにより最適な酸素アニール条件を検討した。
本研究で得られた実験結果として、350 ℃で酸素アニールしたYGdBCO線材が最も高いJcs.f.=5.1 MA/cm2を示すことが確認され、キャリア制御に成功した。また、500 ℃で酸素アニールした線材はJcs.f.=2.9 MA/cm2を示し、300 ℃で酸素アニールした線材はJcs.f.=4.5 MA/cm2を示すことが確認された。本研究で得られたYGdBCO線材の最適アニール温度はYBCO線材の最適アニール温度より低い温度であることが分かる。これは材料の違いにより最適アニール温度が異なるためであると考えられる。次に、酸素アニール温度が磁場中特性に及ぼす影響を調べるために500 ℃及び350 ℃で酸素アニールしたYGdBCO線材の77 K, 1 TにおけるJcの磁場印加角度依存性を評価した。その結果、500 ℃アニールに比べ350 ℃アニールはすべての磁場印加角度で1.3倍以上Jcの向上が確認され、特にB||abでは2倍の向上が確認された。発表では、酸素アニール温度の違いによる結晶性、酸素量、ピンニング効果など超伝導特性に及ぼす影響についても詳細に議論する。