高温超電導バルク材における捕捉磁場特性の温度領域による逆転現象

Crossover phenomenon in the temperature dependence of trapped magnetic fields in HTS bulks


手嶋 英一, 森田 充 (新日鐵住金); 内藤 智之, 藤代 博之 (岩手大)


Abstract:RE-Ba-Cu-O系(REはYまたは希土類元素)高温超電導バルク材は、磁場中でのピン止め力が強いため、卓上型NMR/MRI、医療用小型超強力磁石、MDDS、船舶用モータ、風力用発電機などの強磁場発生源としての応用が期待されている。このようなバルク磁石応用では高い捕捉磁場が求められるが、捕捉磁場は液体窒素中(77K)で評価されることが多い。一方、多くのバルク磁石応用は、より強い磁場強度を得るために、冷凍機冷却によって30-50Kの温度領域を想定している。従来、77Kで捕捉磁場が高いものは、より低い温度領域でも高い捕捉磁場特性を有すると考えられており、実際、報告されているデータでもそのような傾向を示していた。しかし、最近、良質な単結晶試料において、臨界電流密度(Jc)が温度領域で逆転する可能性があることが示唆されている。高温超電導バルク材でも材料の最適化が進み、高品質な試料が得られるようになってきており、バルク材の捕捉磁場特性の温度依存性を詳細に調べることは有用であると考えられる。そこで、本研究では、77Kでの捕捉磁場特性の異なる直径46mmの大型Gd系バルク材を用いて、捕捉磁場特性の温度依存性の比較評価を行った。その結果、高温超電導バルク材の捕捉磁場特性が温度領域によって逆転することが初めて実験的に確認できた。