IBAD-MgO基板上に成膜したGdBCO線材の引張応力による超伝導特性および結晶構造への影響

Influence of applied external strain during the deposition on superconducting properties and crystal structure of the GdBCO coated conductors


浅野 純, 吉田 隆, 一野 裕亮 (名大); 吉積 正晃, 和泉 輝郎 (SRL)


Abstract: 外部負荷を印加した状態でアニールした超伝導線材において超伝導特性の変化が報告されている。また、一軸方向の引張負荷を加え、残留応力を打ち消すことで超伝導特性が極大値を示すことも報告されている。さらに、熱機械的な処理を行うことで無双晶YBCO単結晶が作製されている。これらの報告から成膜時(in-situ時)のREBCO線材にかかる応力を制御することで超伝導特性の向上や双晶境界の影響を明らかにできる可能性がある。そこで、本研究ではreel-to-reel PLDシステムを用いて引張応力を加えた状態でIBAD-MgO基板上にGd1.08Ba1.92Cu3Oy(GdBCO)をターゲットとしたGdBCO薄膜の成膜を行い、成膜時の引張応力が結晶構造や超伝導特性、双晶面に与える影響およびその原因を明らかにすることを目的とした。
成膜時に引張応力を加えることでTcが91.8 Kから93.0 K、Jcselfが2.2 MA/cm2から3.3 MA/cm2と向上した。その際の結晶軸長を逆格子マップを用いて測定した結果、abc 軸それぞれ3.84 Å、3.88 Å、11.75 Åであった。一方、通常用いているGd1.12Ba1.88Cu3Oyターゲットで引張応力を印加せずに成膜したGdBCO薄膜の結晶軸長はabc 軸それぞれ3.87 Å、3.94 Å、11.74 Åであった。当日は引張応力によるTcの向上と結晶構造の関係及び人工ピン導入線材に関しても報告する。