常温磁束トランスと高温超伝導SQUIDを用いた地磁気NMR計測装置の試作

Earth’s field NMR system utilizing room-temperature flux transformer coupled with HTS-SQUID


廿日出 好, 村田 隼基, 綱木 辰悟, 田中 三郎 (豊橋技科大)


Abstract:本研究では、石油探査等への応用が考えられる、地磁気を静磁場として利用したプロトンNMR計測装置の試作について報告する。地磁気中(〜50μT)でプロトンNMRを計測するには、低周波数帯域で高感度な磁気センサが必要であり、我々はこれまでHTS-SQUIDをセンサに用いた超低磁場NMR/MRI装置を開発してきた。これらの装置では、サンプル、SQUID共に磁気シールドルーム内に設置していたが、地磁気NMRでは大型の磁気シールドルームの利用は困難である。そこで、銅線を用いた常温磁束トランスを作製、地磁気中に設置し、離れた小型磁気シールドケース内に設置したHTS-SQUIDとトランスを結合した地磁気NMR装置を試作した。トランスのピックアップコイルとして、環境磁気雑音の低減のため軸型差分コイルを用いた。トランスの結合によるSQUID磁束雑音の増加はほぼみられなかった。本装置では、水ファントムを約0.8Tの永久磁石で前分極し、磁石から離れたピックアップコイルへガス圧を利用して約1秒でファントムを移動させる。移動後、パルス磁場をファントムに印加してプロトンのスピンを90°回転させ、プロトンNMR信号を計測、トランスと結合したSQUIDで信号を読出し、記録するシーケンスを開発した。本装置により、約29.5μT(ラーモア周波数で1260Hzに対応)の地磁気中で、10mlの水ファントムからのNMR信号を計測することができた。また、1次磁場勾配を補償することで信号強度を増大することができた。