Flux pinning properties of YBCO thin films with columnar defects
末吉 哲郎, 古木 裕一, 藤吉 孝則, 光木 文秋, 池上 知顯 (熊本大)
Abstract:高温超伝導体の等方的なJcの磁場角度依存性を実現する一つの方法として,複数方向への1次元ピンの導入が考えられるが,これまでの研究において,複数方向の柱状欠陥はc軸方向の臨界電流密度Jcの改善には有効に作用するが,ab面方向のJcには有効に作用していないような振る舞いを示している.
本研究では,YBCO薄膜のc軸,ab面に対してそれぞれ±30°方向に重イオン照射により柱状欠陥を導入し,c軸に対して,0°,30°,60°,90°に磁場を印加した際の電流-電圧特性から評価した.これより得られた磁束グラス液体相転移温度Tgや動的臨界指数zにより,それぞれの方向の磁束ピンニング状態について調べた.
ab面方向に対して±30°方向に柱状欠陥を導入した試料において,柱状欠陥方向に磁場を印加すると,マッチング磁場の約1/2の磁場でTg-B曲線にキンクが生じる.c軸方向に磁場を印加した場合には,柱状欠陥がc軸に対して60°傾いているにも関わらず,わずかではあるがキンクのような振る舞いが見られる.これに対し,90°方向ではこの振る舞いが見られない.すなわち,ab面方向では柱状欠陥によるピンニング影響を打ち消す,もしくは覆い隠す何らかのピンニング状態になっていることが示唆される.