Bi系高温超伝導線材を用いた磁束トランスと結合したHTS-SQUIDの性能に関する研究

HTS-SQUID coupled with flux transformer using Bi-HTS wire


廿日出 好, 千ヶ崎 卓巳, 田中 三郎 (豊橋技科大); 安達 成司, 田辺 圭一 (ISTEC)


Abstract:HTS-SQUIDは高い磁場分解能と空間分解能を有するが、センササイズは約10mmであり、磁気信号は距離の3乗に反比例して減少するため、素子単体では有効捕獲面積と測定可能範囲に限界がある。そこで、測定磁束量の増大と測定範囲の拡大が見込まれ、低損失での磁気信号伝達が可能なBi系HTS線材を用いた磁束トランスを作製し、HTS-SQUIDと結合させた際の特性を調べた。Bi系線材として、住友電工㈱のDI-BSSCO Type HTテープ線材を用いた。この線材を直径85mmのFRPボビンに各13回ずつ逆方向に巻きつけた二つのコイルをハンダ接続し、軸型グラジオメータ型ピックアップコイルを形成した。ピックアップコイルには、約10mm長のハンダ接続が4箇所あり、線材全てを液体窒素で冷却したときの直流抵抗は5μΩ以下であった。またコイルのインダクタンスは約17μHであった。このピックアップコイルを、HTS-SQUIDグラジオメータ上に積層された26回巻きのインプットコイルとハンダ接続して磁束トランスを構成し、SQUIDの磁束ノイズを計測した。磁束トランスとSQUIDは磁気シールドルーム内で液体窒素冷却した。SQUID素子単体でのホワイト磁束ノイズレベルは約5μφ_0/Hz^1/2であったが、磁束トランスを結合させた場合、ノイズレベルは約100μφ_0/Hz^1/2となった。これは環境中の高周波数電磁ノイズがピックアップコイルに結合してSQUIDに伝達されることでSQUIDのφ-V曲線が変調され、実効的な磁束電圧変換係数dV/dφが減少したためと考えられた。そこで、ピックアップコイルに結合する電磁ノイズを減少させるため、コイルを1層のアルミホイルで包み、さらに液体窒素デュワーごと電磁遮蔽を行なった結果、ノイズレベルは約30μφ_0/Hz^1/2まで低減させることができた。