永久磁石を用いた超低磁場SQUID-MRIシステムの開発

Development of ultra-low field MRI system using HTS-SQUID and permanent magnet


廿日出 好, 福元 翔平, 綱木 辰悟, 田中 三郎 (豊橋技科大)


Abstract:我々は、HTS-SQUIDと数10μTの超低磁場を用いたSQUID-MRIシステムの開発を行なってきた。これまでのシステムでは、電磁コイルを用いて約30mTの分極磁場を数秒間水サンプルに印加して、直交する静磁場中で分極磁場を素早く立ち下げることによりFID信号を発生させて、HTS-rf-SQUIDで信号を計測する方式を用いてきた。これにより1D-MRI信号を計測することができた。MRI信号のS/Nを増加するには分極磁場を増大させればよいが、磁場増大に伴いコイルの発熱や立ち下げ時間の増加などの問題が生じることがわかった。一方、永久磁石を用いたNMR/MRIは古くから行われており、永久磁石を用いれば消費電力や発熱なしに1Tまでの分極磁場を実現することが原理的に可能である。そこで本研究では前述のシステムへの永久磁石の導入を行なった。水の場合、分極後、磁化ベクトルはT1緩和により3秒ほどで減衰してしまう。そこで、ガス圧を用いて、250mTの中心磁束密度をもつ円筒状永久磁石で分極した水サンプルを、約1.5m離れたSQUIDの真下に約0.5秒で移動させる機構を作製した。この方式の場合、比較的長い時間をかけて分極磁場から静磁場に移動するため、分極磁場と静磁場の向きが直交していてもそのままではFID信号は得られなかった。そこで、SQUID周辺にパルスコイルを設置し、SQUID直下へサンプルが移動した直後に磁化ベクトルの角度を回転させるACパルスを印加する方式を採用した。この結果、90°パルスを印加することにより、約45μTの静磁場中で10mlの水から最大約20pT/Hz^1/2の振幅をもつFID信号を計測することができた。従来の30mTの電磁コイルを用いた場合の信号と比較すると、250mTの永久磁石を用いた場合、信号強度は約10倍となった。