MgB2薄膜の輸送特性に及ぼすマルチバンド効果の評価

Understanding the multi-band effects on current transport in tilted MgB2 films


山本 明保 (東大); MARINA Putti (Genova 大); POLLYANSKII Anatolii , GUREVICH Alexander , LARBALESTIER David (NHMFL); ZHUANG Chenggang , XI Xiaoxing (Temple Univ.); 下山 淳一, 岸尾 光二 (東大)


Abstract:MgB2は2ギャップ超伝導体であるがマルチバンド効果が電流輸送特性に及ぼす影響はよく分かっていない。シグマバンドとパイバンドは温度・磁場に対する応答が異なり、とくにc軸方向の電流輸送を主に担うパイバンドの磁場下での挙動は、多結晶材料であるMgB2線材の臨界電流特性に大きな影響を及ぼしていると予想され、応用の観点からも重要である。本研究ではHPCVD法によりMgO(211)基板上にc軸が19度チルトしたエピタキシャルMgB2薄膜を作製した。この薄膜はチルト方向と垂直に発達した階段状のステップ構造を有し、ステップに対して平行方向にab面のみを流れるJLと、垂直方向にステップをまたいでab面とc軸方向の両方を流れるJTの2種の異方的電流を生じる。両バンドが伝導に寄与するJLに対して、JTはシグマバンドが擬2次元的であることに由来して主にパイバンドによって担われると考えられ、磁気光学法、磁化測定、電流輸送測定により、2つの電流の比JL/JTを温度、磁場を変化させて測定することで、パイバンドの輸送特性に及ぼす影響を評価することを目指した。