Ag-Au合金を母材とするBi2223線材およびバリア入りBi2223線材の交流損失特性

AC loss properties of Bi2223 tapes with oxide barriers or resistive Ag-Au alloy matrix


稲田 亮史, 光野 克紀, 荘口 和真, 中村 雄一, 太田 昭男 (豊橋技科大); 李 成山, 張 平祥 (西北有色金属研究院)
inada*eee.tut.ac.jp


Abstract:我々はBi2223線材の低交流損失化に向けて,フィラメント間に酸化物バリアを導入した線材の作製と交流特性評価を進めている。前回の低温学会(2008年度秋季)にて,SrZrO3+20wt%-Bi2212バリアを導入した上で10mm以下のツイストを施すことで,垂直横磁界下においてフィラメント間電磁結合が生じる目安となる特性周波数(fc)が100Hz以上に向上したこと,商用周波数域において垂直磁界損失の低減効果が得られたことを報告した。一方,商用周波数域での損失測定結果から見積もった中心到達磁界(Bp)は,フィラメント単体の寸法から予測される値よりかなり大きく,磁化損失中に含まれるヒステリシス損失の低減が不十分であることが示唆された。この一因として,バリア線材内で観測されたフィラメント同士の接触箇所(ブリッジング)の存在が考えられるが,その検討は十分に成されていない。
本研究では,77Kでの抵抗率が純銀と比較して7?8倍程度高いAg-Au(8wt%)合金を母材とするブリッジングのないツイスト線材を作製し,77K・垂直磁界下での交流損失を測定・評価した。実験結果に基づいて,両線材の横断抵抗率の大小関係を評価すると共に,バリア線材内に生じたブリッジングが損失特性におよぼす影響を考察した。