準安定オーステナイト系ステンレス鋼の高圧水素ガスによる脆化の温度依存性

Temperature dependence of embrittlement of meta-stable austenitic stainless steels in high pressure gaseous hydrogen


柴田 浩司, 緒形 俊夫 , 由利 哲美, 小野 嘉則 (NIMS )
kojichiekoshibata*yahoo.co.jp


Abstract:高圧水素ガス雰囲気で準安定オーステナイト系ステンレス鋼を引張試験すると、水素による絞りの低下が150K付近で最も激しく、それより低温および高温でその程度が減少する。
本研究では、文献による拡散係数を用いて鋼中への水素の拡散を計算して上記現象の理由を考察した。
その結果、拡散係数の文献値にばらつきがみられるが、150K付近では水素はオーステナイト相中でほとんど拡散せず、拡散はマルテンサイト相でのみ生じること、マルテンサイト相中でも温度低下とともに水素の拡散速度は遅くなり、50Kにもなると水素の拡散はほとんど生じなくなることが推察された。
このことから、準安定ステンレス鋼の高圧水素ガスによる脆化の温度依存性は、変形によって生じるマルテンサイト相の量とマルテンサイト相における水素の拡散速度から説明できるものと考察される。