HTS超伝導コイルの過負荷耐量特性の実験的検討

Experimental investigation on overload characteristics of HTS superconducting coils


家永 寛史, 二ノ宮 晃, 石郷岡 猛 (成蹊大); 古瀬 充穂 (産総研)
ninomiya*st.seikei.ac.jp


Abstract:液体窒素で浸漬冷却されるHTS超伝導コイルは、冷媒の冷却能力や導体の特性を考慮すると、通常言われている1μV/cmの臨界電流の電界基準を上回る領域での利用が期待できる。この点を考慮して我々は2種類の試験用コイルを自作して、超伝導コイルの熱暴走発生までの超伝導限界特性について実験的に検討した。使用導体は、Bi系超伝導テープ線材であり、同一断面のステンレステープが共巻きしてある。また、内部には熱電対を2か所に配置し、内部温度をモニタできるようにした。このコイルを二個作成し、一つは含浸、もう一つは非含浸とした。
 試験は、以下の三項目について実施した。第一は、試作コイルの冷却安定性把握のための試験であり、コイルには直接通電せずにステンレステープ導体にのみ通電してコイルの冷却性能を動的に検討した。これにより、ある条件で熱振動が発生することが確認できた。この結果を踏まえて、第二の試験は超伝導コイルに直流通電を行い、第三の試験は交流通電を行った。これらより、直流通電時は、1μV/cmの臨界条件以上でも運転が可能であること、また低電流領域では熱振動現象を確認した。 そして、高電流領域では、熱振動を起こさずに直接熱暴走をすることも把握できた。この現象は、ステンレステープ導体を加熱させながらHTS導体を交流通電させた試験でも確認された。そして、熱暴走を生ずる交流電流値(実効値)は、直流の臨界電流値にほぼ一致した。