低傾角YBCOバイクリスタル粒界の磁界誘起クロスオーバ領域における粒間Jcの検出

Detection of inter-grain Jc at low angle bi-crystalline YBCO film across magnetic field induced crossover regime


木須 隆暢, MATSEKH Arkadiy, 井上 昌睦 (九大); 吉積 正晃, 須藤 泰範, 和泉 輝郎, 塩原 融 (SRL)
kiss*sc.kyushu-u.ac.jp


Abstract:高温超伝導体ではそのd波対称性により、結晶粒界の傾角の増大と共に粒界を透過する臨界電流密度は指数関数的に低下することが知られている。しかしながら、実用上重要となる磁界下の振る舞いは十分に明らかとされていない。四端子法を用いた測定により、外部磁界の増大と共に、粒内Jcと粒間Jcの差は減少し、高磁界領域において両者は一致することが報告されている。しかしながら、粒界の幅は電極間距離に比べ何桁も小さく、一般に用いられるマクロスケールの測定では、粒間の真のJcを検出する事は困難である。本研究では、この点を指摘すると共に、ミクロンオーダーの高分解能計測を可能とする、低温レーザ走査顕微法を用いて、粒界での局所的な電流―電圧特性を評価し、粒内の特性との定量的比較を行った。その結果、高磁界下のクロスオーバ領域において、粒間Jcと粒内Jcの差異を明確に捉えることに世界で初めて成功した。このことは、粒界での損失状態が、高磁界領域においてバルクのそれと比べ明らかに異なることを示しており、粒界における量子化磁束挙動を理解する上で、極めて重要な知見といえる。低傾角粒界での損失を支配する、Abrikosov-Josephsonボルテックスの物性パラメータをはじめ、粒界での量子化磁束挙動の詳細について考察する。本研究の一部は、イットリウム系超電導電力機器技術開発の一環として、ISTECを通じてNEDOからの委託を受けて実施するとともに、日本学術振興会の科研費(20360143)の助成を得て行ったものである。