YBCO 薄膜におけるナノ析出物による強い磁束ピン止め(1)ー臨界電流の磁界角度依存性と透過電顕観察

Strong flux pinning in YBCO thin films due to nanometer-sized precipitates (1): Magnetic-field angle dependent critical currents and TEM observations


山崎 裕文, 大木 康太郎, 山田 博, 中川 愛彦, 馬渡 康徳 (産総研)
h.yamasaki*aist.go.jp


Abstract:結晶が配向したエピタキシャル YBCO 薄膜は、単結晶や溶融バルク体と比較して、高い臨界電流密度 Jc > 1 MA/cm^2@77K を示すが、その高い Jc の起源(磁束ピン止め機構)はこれまでよく分かっていなかった。今回、Jc の磁界角度依存性 Jc(θ) 測定と透過電子顕微鏡観察から、YBCO 薄膜中に含まれる高密度のナノ析出物が主要なピン止め中心であることが明らかとなった。直径が 6-25 nm 程度で比較的大きい析出物を含む薄膜では、Jc(θ) でc軸を中心としたブロードなピークが現れた。これに対して、YBCO 薄膜で最も一般的な、ab 平面中心の富士山型の Jc ピークが観測された薄膜では、直径が 7 nm 以下の非常に小さい析出物が観察され、従来、ランダムピンと呼ばれていたピン止め中心の実態が、このような微小析出物であることが分かった。