移動する磁気微粒子検出のためのマルチチャンネルHTS-SQUIDシステムの開発

Multi-Channel HTS-SQUID System to Detect Moving Magnetic Particles


廿日出 好, 鳥居 泰邦, 苅谷 明昌, 田中 三郎 (豊橋技科大)
hatukade*eco.tut.ac.jp


Abstract:現在、磁気微粒子を薬剤に付加して体内に注入して、血管中を流れる微粒子付き薬剤を磁気力により体内の患部へ誘導・配送する磁気的薬剤配送システム(MDDS)に注目が集まっている。現状では、微粒子の誘導・配送結果は、ファントム実験および動物実験と解剖により確認しているが、配送中に微粒子の位置や量などを確認する手法は開発されていない。一方、我々は、DNA判定や抗原抗体反応検出応用のため、磁気微粒子と超高感度なSQUID磁気センサを用いた微小磁気検出に関する研究を行ってきた。そこで、今回、MDDSにおける移動中磁気微粒子を検出するための技術として、マルチチャンネルHTS-SQUIDの設計・作製と、これを用いた微粒子検出装置の開発を行った。マルチチャンネルHTS-SQUIDとして、10mm角のバイクリスタルSrTiO3基板上に1.5mm角のHTS-SQUIDマグネトメータを3個配列した設計を採用し、YBCO薄膜を用いてHTS-SQUIDを作製した。この3個のSQUIDの磁場ノイズレベルは平均約600fT/Hz1/2であった。3チャンネルSQUIDアレイをクライオスタットにマウントして、SQUID配列の上に設置した直流磁場印加用コイルの中を通過する磁気微粒子より発生する磁場を検出する装置を構築した。フェリコロイド16mgを直流励磁コイル中で、SQUID一次元配列に対して平行、および直角に移動させて発生磁場を計測したところ、平行の場合はそれぞれのSQUIDの真上で約60nTppの信号を検出した。また、直角に移動させた場合、微粒子が真下を通過したSQUIDでは約60nTppの信号が検出され、離れた位置にあるSQUIDからは距離の約2乗に反比例した信号が得られ、信号のピークのタイミングと強度から微粒子の位置を推定できる可能性が示された。また、微粒子量を変化させて同様の測定を行ったところ、量に比例した磁気信号が得られ、本装置により移動中微粒子の位置と量の推定が行える可能性が示された。現在、MDDSに適した磁化方法の検討と、直流励磁強度を増加してS/Nを高めるため、高い磁場中でも動作するHTS-SQUIDマグネトメータの設計を進めている。