磁場耐性の高いHTS-SQUIDを用いたロボット式モバイル非破壊検査装置

Robot-Arm-Based Mobile Nondestructive Inspection System Using Robust HTS-SQUID in Magnetic Field


廿日出 好, 金井 貳, 林 啓太 (豊橋技科大); 田辺 圭一 (SRL); 田中 三郎 (豊橋技科大)
hatukade*eco.tut.ac.jp


Abstract:これまでに行われてきたHTS-SQUIDを用いた非破壊検査(NDI)の研究では、バイクリスタルSTO基板とYBCO薄膜を用いたHTS-SQUIDが主に用いられてきた。このようなバイクリスタル接合を用いたSQUIDの場合、粒界を通過している磁束検出コイルの一部の磁場耐性が低くなり、数10nT〜数100nTという磁場に晒されるだけで、磁束のトラップやホッピングが生じてSQUIDが安定動作できなくなるという問題があった。このため、地磁気(50μT)などを含む環境磁場中で移動させることが困難であり、検査の対象は移動可能な小さな板材や線材、管などに制限されていた。一方、SRLの田辺らにより、ランプエッジ接合を用いたHTS-SQUIDが新たに開発された。このSQUIDでは磁束検出コイルに粒界が存在しないため、高い磁場耐性を持っている可能性がある。そこで、今回、ランプエッジ接合を持つ新型のHTS-SQUIDグラジオメータの交流磁場中における磁場耐性を調べ、従来のバイクリスタル接合をもつHTS-SQUIDグラジオメータとの比較を行った。磁気シールドルーム内で、上記2種類のHTS-SQUIDに対して、100Hzの交流磁場を印加して、磁場強度を1pTから3mTまで増加させていき、磁束トラップ・ホッピングの発生がどの磁場強度で発生するかを調べた。この結果、従来のバイクリスタル接合を持つグラジオメータは60nTの磁場強度で磁束トラップが確認された。一方、新型のグラジオメータでは、2.8mTの磁場まで磁束トラップが生じなかった。このことから、ランプエッジ接合をもつグラジオメータは、従来よりも4〜5桁優れた磁場耐性を持っていることが分かった。この新型グラジオメータを小型クライオスタットにマウントして、これをロボットアームに搭載したモバイル非破壊検査装置を開発した。本装置では、磁気シールドの無い環境中でグラジオメータを速度10mm/sで移動させても、磁束トラップや不安定動作は生じなかった。また、本装置に渦電流法を応用して、残留磁化をもつステンレス板にあけた人工欠陥による磁気応答を、SQUIDを走査させて検出することができた。以上より、新型グラジオメータは環境磁場中で移動させるのが困難な大型の構造物などの検査が行える可能性が示された。