ロボットアームを用いた冷凍機冷却モバイルHTS-SQUID非破壊検査システム

Nondestructive Inspection System with Cryocooler-based Mobile HTS-SQUID Integrated on Robot-arm


廿日出 好 , 代継 浩平 , 田中 三郎 (豊橋技科大)
hatukade*eco.tut.ac.jp
Abstract:  我々は、実用化、応用範囲の拡大のため、環境中を自由に移動しながら対象物をスキャンできるモバイルSQUID非破壊検査システムの開発を行っている。これまでに、SQUID移動により環境磁場が鎖交したときのSQUID出力をSQUID周囲に設置した補償コイルにフィードバックすることにより、キャンセル磁場を発生させて環境磁場を打ち消すアクティブシールド技術を開発して、HTS-SQUIDグラジオメータの環境中移動、および非破壊検査を実現した。本技術を市販のFanucロボットアームLR Mate 200iBにマウントしたHTS-SQUIDグラジオメータに適用したところ、ロボット移動時に発生する1μT弱のパルス磁場ノイズによりSQUIDで磁束トラップが発生して、前述のフィードバック回路が正常動作しなかった。そこで、本研究では、数10μTの磁場中でも動作するフラックスゲート磁束計を追加してアクティブシールド技術の改善を行った。ここで、フラックスゲートはHTS-SQUIDグラジオメータの可能な限り近くに設置してSQUIDと一緒に移動させる。ここでは、フラックスゲートの出力電圧をSQUIDとフラックスゲートの両方を囲む補償コイルにフィードバックする回路を構成して、SQUIDを冷却させる前にフィードバック回路を動作させる。これにより、SQUID周辺で低磁場が形成され、環境中でもSQUID冷却時に磁束トラップが生じて特性が劣化せず、移動による鎖交磁束がSQUIDにトラップされる前にキャンセルする回路を構築した。SQUIDは励磁コイルを用いて特定周波数磁場を測定して非破壊検査を行うため、フラックスゲート出力にローパスフィルタをかけて、移動による低周波数成分磁場のみキャンセルさせ、これよりも高い周波数を非破壊検査に用いることができる。本技術の適用により、パルス管冷凍機で67K付近に冷却したHTS-SQUIDグラジオメータを、前述のロボットアームに搭載して速度10mm/sで環境中を移動させたところ、SQUIDに磁束トラップが生じることもロックが外れることもなく、わずかなノイズ増加で移動させることができた。また、本シールド技術により、約600nTのロボット由来の磁場ノイズは約20分の1にまで減衰できることが分かった。本装置を用いて、水素燃料電池用高圧タンクの構造を模擬したCFRP・アルミ積層板のアルミ深部にある欠陥の検出デモを行い、CFRP表面から8mmの深さまで達している内部亀裂の検出が可能であることを示した。