ナノオーダーNi層を導入したMgB2薄膜の微細組織観察
Microstructure observation of MgB2 thin film fabricated with introducing nanosized Ni layers

波多 聰 , 吉留 健 , 桑野 範之 (九大);福山 寛大 , 増田 和幸 , 土井 俊哉 , 白樂 善則 (鹿児島大);松本 明善 , 北口 仁 , 熊倉 浩明 (NIMS)
hata*asem.kyushu-u.ac.jp


Abstract: MgB2層と極薄Ni層をnmスケールで交互に堆積させたMgB2/Ni多層膜は、膜面に平行な磁場を挿入した際に高いJcを示す。本研究では、電子ビーム蒸着法でSi基板上に成膜したMgB2/Ni多層膜の透過電子顕微鏡(TEM)観察を行い、Jc特性と微細組織の関係を検討した。断面観察より、厚さ約1nmのNi層と約15nmのMgB2層が交互に堆積していることが確認された。Ni層はSi基板近傍で最も平滑かつ均一な厚みを有しており、上層部に行くにつれて徐々に平滑性が低下していた。これは、柱状成長しているMgB2多結晶膜表面の微小な凹凸によるものと解釈される。Ni層間の間隔15 nmは、平行磁場で最も高いピニング力が発生する8Tでの理想的な量子化磁束格子間隔と一致した。このことは、Ni層の挿入が磁束のピンニングに有効に働いていることを示唆するものである。