低温・強磁場条件下におけるSmBa2Cu3Oy薄膜の磁束ピンニング特性
Flux pinning properties of SmBa2Cu3Oy thin films in high magnetic fields and low temperature

一野 祐亮 , 吉田 隆 , 三浦 正志 , 高井 吉明 (名大);松本 要 (京大);向田 昌志 (九大);一瀬 中 (電中研);堀井 滋 (東大)淡路 智 , 渡辺 和雄 (東北大)
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Abstract: コーテッド超伝導線材を目指した磁場中臨界電流密度の向上のために、我々はこれまで、低温成膜(LTG)法で作製したSmBa2Cu3Oy(Sm123)薄膜や、多層化したSm123厚膜に関して報告を行ってきた。特に、LTG-Sm123薄膜にナノサイズの低Tc相(NLP)を導入したNLP-Sm123薄膜は、77 Kにおいて、4.2 KのNbTi線材に匹敵する磁場中Jcを示した。本講演では、磁束ピンニングに対するNLPの影響を明らかにするため、低温・強磁場の条件下でSm123薄膜のJcを測定し、そのピンニング力を評価した。65 Kと40 KにおけるNLP-Sm123薄膜のJc-B曲線は、4.2 KにおけるNb3Snワイヤーを上回っていた。例えば、Nb3SnワイヤーのJcが8 T、4.2 Kで0.17MA/cm2であるのに対して、NLP-Sm123の8 TのJcは、65 Kで0.6 MA/cm2、40 Kで3.0 MA/cm2であった。次に、臨界状態モデルを用いて磁場に対するピンニング力の変化を見積もった。通常、ピンニング力曲線は2 T付近に一つのピークを持つ形状であるが、65 Kと77 KのNLP-Sm123は、4 T付近にもう一つの異常ピークを持つ形状であった。しかし、この異常ピークは40 Kのピンニング力曲線では消失した。つまり、異常ピークは低Tc相を起源としており、十分低い温度では低Tc相が常伝導転移しないために、異常ピークが消えたと考えられる。