YBCOテープ線材の銀安定化層を用いた拡散接合

Diffusion joint of the YBCO coated conductor using silver stabilizing layer


加藤順子,坂井直道(SRL);田島節子(SRL、阪大);宮田成紀,小西昌也,山田穣,筑本知子,中尾公一,和泉輝郎,塩原融(SRL)
yoshioka*istec.or.jp

Abstract:  Y系酸化物超電導テープ線材は、その優れた超電導特性から、次世代線材として様々な機器やシステムへの応用が期待されている。その際、重要となるのが接合技術で、テープ線材同士の接合のみならず、金属などの常電導材料との接合技術も不可欠となる。しかし、接合は応用には欠かせない重要な技術の1つであるにもかかわらず、報告例は少なく、しかもそれらは、はんだを用いた報告に限られる。はんだ接合は簡便な接合方法であるが、はんだと銀安定化層の間に発生する界面抵抗や、はんだ自身の抵抗が加算され、低抵抗を得るためには、重ね合わせる面積を大幅に増やす必要性がある。また、銀の熱伝導率が高いため、銀安定化層を持つテープ線材のはんだ接合は、簡単ではない。さらに、はんだの融点は低いので、複数の接合が必要な機器では、接合作業中の熱により、既に接合してある接合部のはんだが溶けるという問題が予測できる。そこで本研究では、はんだを用いない低抵抗接合技術の開発を目的とし、テープ線材の銀安定化層を用いた拡散接合の研究を行った。実験に供したテープ線材は、ハステロイ上にGd2Zr2O7 (GZO)、CeO2、YBCO、Agの順で堆積させたもので、YBCO については、PLD 又は MO-CVD で作製した2種類の線材を用意した。これらの線材を 2x70 mm2の長方形に切り出して、液体窒素中で接合前の V-I 測定を行った。次に、その線材の中央を切断して2本にし(2x35 mm2)、それぞれの銀層の端部を向かい合わせて 2x20 mm2 の面積で重ね、インコネル製の治具で固定し、酸素気流中で、500度から室温までの熱処理を行った。熱処理後、治具を外し、接合部をまたいだV-I測定を行った。その結果、接合した試料のV-I曲線は、接合前のV-I曲線とほとんど同じで、Icの劣化が無いことが確認された。また、接合部の抵抗は非常に低く、10 nΩcm2であった。しかしながら、治具で固定された接合部にかかる圧力が高いと、接合部のIcが劣化することが分かった。本研究は、超電導応用基盤技術研究開発業務の一環として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により実施したものである。