レーザ誘起熱電効果を用いたHTS結晶粒の可視化法の提案

Novel visualizing technique for HTS grain structure in coated conductors by use of laser induced thermoelectric voltage


木須 隆暢,井上昌睦,庄山俊弘,藤原隆,ZULIS Zulkifli,三井大輔,今村和孝,竹尾正勝(九大);大松一也(住友電工);衣斐顕,山田穣,塩原融(SRL)
kiss*sc.kyushu-u.ac.jp

Abstract:  レーザ光の局所照射に伴う熱電効果を利用することによって、高温超電導線材のHTS結晶粒の可視化法を提案する。二次元生の強い酸化物高温超伝導体では、常伝導状態においてCuO2面内とc軸方向とでゼーベック係数にも大きな異方性を有する。その結果、傾斜したCuO2面を有する試料に対して、ゼーベックテンソルの非対角成分が観測されることが期待できる。すなわち、レーザによって誘起される膜厚方向の温度勾配に起因して、面内方向の電圧が誘起され、その値は、CuO2面の傾斜角に比例することを示す。レーザ走査に伴う誘起電圧を観測することによって、面内の結晶粒のc軸傾斜の情報を可視化する事が出来る。また、面内に欠陥等の異相が分布する場合にも、面内のゼーベック係数の対称性が破れることから、面内方向の電圧が誘起される。すなわち、前記と同様の観測によって欠陥位置の可視化が可能である。以上の方法は、筆者等が従来より報告している超伝導状態の磁束フロー損失を可視化する低温レーザ顕微鏡システムと同一のシステムを用いて、結晶粒の位置情報を同時に得ることを可能とする画期的な観測手法である。本研究は超電導応用基盤技術研究開発の一環として、(財)国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)を通じて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受けると共に、日本学術振興会の科研費(15360151)の助成を得て実施したものである。