極低温における304系鋼の加工軟化機構
Mechanism for work-softening of 304 series steels at cryogenic temperatures
柴田 浩司
,緒形俊夫,由利哲美(NIMS);藤井秀樹,大宮慎一(新日鐵)
kojichiekoshibata*yahoo.co.jp
Abstract: 極低温における304系鋼の応力-ひずみ曲線は、316系鋼、310系鋼などの他のオーステナイト系ステンレス鋼の応力-ひずみ曲線と異なるいくつかの特徴を有する。その1つに降伏後の明瞭な加工軟化がある。Suzukiらは、この現象が加工誘起イプシロンマルテンサイトの交差する場所でアルファプライムマルテンサイトが生成されることにより、不動転位が可動転位になるために生じるとしている(いわゆるwindow effect)。しかし、マルテンサイト生成量-ひずみ曲線と応力-ひずみ曲線とを比較すると、アルファプライムマルテンサイトの生成以前から加工軟化が生じているように思われる。そこで、計算機シミュレーションを用いて、この加工軟化現象の機構を検討した。その結果、極低温における304系鋼の変形に、転位の移動、相変態だけでなく例えば積層欠陥の生成などせん断ひずみの大きな変形機構が関与していると考えないかぎり、実際に観察される加工軟化現象を説明することが難しいことが分かった。