3段集中定数型超電導フィルタのメカニカルチューニング特性

Mechanical tuning effect for 3-pole superconducting lumped-element filter.


@井口 一輝, 本津 茂樹, 西川 博昭, 楠 正暢

近代生物理工


マイクロ波無線通信技術の急速な進歩に伴い、小型、高機能な通信デバイスの開発が望まれている。我々は、このような要求を満たし、さらに多様なシステムへ対応可能な柔軟性をも併せ持つ、新規な超電導マイクロ波フィルタとして、中心周波数、帯域幅、スカート特性を独立に制御可能な、集中定数型メカニカルチューナブルフィルタを提案し、その設計技法の確立、および電磁界シミュレータによるチューニング特性の研究を行なってきた。今回は、設計したフィルタを実際に作製し、そのメカニカルチューニング特性を測定した結果について報告する。回路シミュレータ(Serenade-Harmonica, Ver. 8.71)および電磁界シミュレータ(Sonnet-EM, Ver. 8.51)を用いて中心周波数6 GHz、3 dB帯域幅100 MHz、リップル0.1 dBの3段集中定数型バンドパスフィルタを設計し、そのレイアウトを決定した。このレイアウトに基づき、試料はMgO(100)基板上に作製されたYBCO薄膜(THEVA社、500 nm)をフォトリソグラフィ及び0.1 Nの塩酸を用いたウェットエッチングによって作製した。得られた試料をクライオスタットに導入し、低温中でベクトルネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー、HP4192A)を用いて伝搬特性(S21)を測定した。測定の結果、電磁界シミュレータの結果に近い、比較的良好なバンドパスフィルタ特性が得られ、集中定数型回路が6 GHzの高周波に対応可能であることを明らかにした。また、メカニカルチューニングの第一歩として、MgO単結晶を試料上に密着させた際のS21を測定したところ、MgO単結晶が無い場合と比較して、スカート特性をほぼ保ったまま1 GHzもの大きな中心周波数変化が得られた。