低損失性と高安定性を両立したラザフォードケーブルの安定性

Stability of a Rutherford cable with low losses and high stability


鹿児島大・工,福岡女学院大A,核融合研B
@川越 明史, 住吉 文夫, 川島 照子A, 三戸 利行B


  我々は,高安定で低損失なラザフォードケーブルの設計方法を提案している.このケーブルは,理論的に予測不可能な素線間接触抵抗を排除するために,ケーブル断面端付近の上下素線対は熱処理やハンダ付けなどで低抵抗接続する.これにより,素線内に局所的な常電導の芽が発生したとき,他の素線への素早い電流転流が可能になる.また,素線間結合損失を低減するために,ステンレスシートが挿入され,かつ素線ツイストピッチを通常より長くしている.これまでに,理論と実験の両面から素線間結合損失の低減効果を実証し,また,最小クエンチエネルギの測定を行い,高い安定を持っていることを明らかにしてきた.  今回は,上下素線間の低抵抗接続領域が安定性に及ぼす影響を定量的に明らかにするために,上下素線間の抵抗値を変えたサンプルの最小クエンチエネルギを測定した.上下素線間の抵抗値は,同じ処理を行ったサンプルの結合損失測定結果から間接的に求めた.その結果,上下素線間抵抗値が約20倍小さくなると,臨界電流に対する通電電流の割合が0.6の時の最小クエンチエネルギは,ステンレスシートを持たないサンプルは約0.2倍,ステンレスシートを持っているサンプルは約0.4倍になった.しかし,ステンレスシートを持つサンプルは,ステンレスシートのないサンプルに比べ,平均的な上下素線間の抵抗値が1/5小さくても,最小クエンチエネルギは1/2小さくなった.これは,ステンレスシートの熱伝導率が小さいために,上下方向の熱伝達が悪くなったためだと考えられる.今後詳細な検討を行い報告する.