46kA,13Tニオブ・アルミ超電導コイルの試験結果
―導体断面内の歪分布を考 慮した臨界電流特性評価―

Test results of 46kA,13T Nb3Al superconducting coil
-Critical current characteristic evaluation considering strain distribution in conductor cross section-


日本原子力研究所
@小泉徳潔, 松井邦浩, 中嶋秀夫, 安藤俊就, 布谷嘉彦, 奥野清, モデル・ コイル実験グループ


  ニオブ・スズに代表されるA15型の超電導導体では、コンジットとケーブル との熱収縮率の差により熱歪(ε、ケーブル断面内で均一の圧縮)が発生し、さら に、自己磁場(B)により断面内に1T以上の磁場分布が発生する。この結果、ケーブ ル内の臨界電流密度jc(ε,B)は分布を持ち、導体断面内の最高磁界部の(最も低い) 臨界電流密度によって、導体の臨界電流値が決定される。一方、今回開発したニオブ ・アルミ・コイルの臨界電流の測定結果は、大電流の領域では、歪をゼロとした素線 の特性と一致する(前回報告)一方で、低電流側では圧縮歪0.46%が加わっていると 評価され、熱歪み(一定)が支配的とする一般的な特性と異なる結果となった。本特 性は次のように説明できる。本コイルの製作ではReact-and-wind法を採用し、熱処理 後に巻線径を拡径することで、導体に0.4%の曲げ歪を印加した。この場合、導体断面 内で、高磁界側は拡径による引張歪が、低磁界側では拡径による圧縮歪が、それぞれ 熱歪(圧縮)に重畳されたものになり、これに自己磁場の影響が加わる。この結果、 導体断面内に大きな磁場分布が生じる高電流領域では、内周側の歪ゼロが支配的とな り、低電流領域では外周側の圧縮歪みが支配的となる。これにより、ニオブ・アルミ 導体ではReact-and-wind法を利用することで熱歪による臨界電流の劣化を緩和し、素 線本来の高い臨界電流を有効利用しコイル性能を向上できることを実証した。