熱擾乱下における高温超伝導体の通電特性

Transport E-J characteristics in HTS under the influence of thermal fluctuation


九大院シス情A,九工大B

@木須隆暢A,入江滋昭A,白石和男A,木内勝A,松下照男B


  高温超伝導体の損失機構を解明するためには、広い電界範囲に亘る電界―電流密度特性(E-J)特性に関する考察が不可欠である。この事はまた、応用の基礎として極めて重要である。例えば、直流応用では通常の通電法で評価される電界領域に比べ何桁も低い超低電界領域を使用することになるため、短尺線材の測定より得られる中高電界領域の特性と、超低電界領域の特性との関係を明らかとすることが強く求められる。しかしながら、広い電界範囲に亘るE-J特性を統一的にかつ定量的精度をもって記述できる理論は今のところ無いばかりか、理論のターゲットとなり得る、広い電界範囲に亘って系統的に測定された充分なデータすら無いのが現状である。 本研究では、1)四端子法、2)Hall素子による磁化測定、3)SQUIDによる磁化測定を用いることによって、Bi2223線材のE-J特性をほぼ9桁の電界範囲に亘って測定した。また、臨界電流分布と磁束ホッピングに関する理論的考察に基づき、従来報告してきたパーコレーションモデルを磁束ホッピングに伴うクリープ電界を取り込んだ形に拡張した。四端子法のデータより得られる、Jcの統計分布を基に、活性化エネルギーUの統計分布を評価し、実験と解析結果とを比較したところ、両者は定量的に良い一致を示した。Uの分布は10^-5V/m以上の解析によって得られたJcに比例すると仮定し、比例係数U/Jc=6.6×10^-6 K/(A/m^2)を用いた。この値は一定値であるので、磁界依存性はすべて高電界領域の特性を基に得られていることに注意して欲しい。すなわち、四端子法による結果を基に、超低電界領域の特性を高精度に予測する事が可能である。また、高温超伝導体の不可逆磁界は、実用上重要なパラメータであるにもかかわらず、測定法によって著しく異なった値が得られることが知られている。これらの依存性は、不可逆磁界を定義する電界基準、電流密度の違いに起因しており、前述した広い範囲のE-J特性に関する考察の結果、定量的に関連づけられる。