LPE法を用いた金属基板上への成膜を目的としたYBCO成長温度の低温化

Lowering of LPE growth temperature for YBCO formation on metal tapes


超電導工学研究所A,東芝B

@須賀俊裕A,山田容士A,金錫範A,前田敏彦A,山田穣A,張庭張B,山崎六月B,芳野久士B


  液相エピタキシャル法(LPE法)によるYBCOの成膜方法は、溶質ソースのYBCOを溶解させた高温の溶液にYBCOの結晶成長の核となる種膜を取り付けた基板をその溶液表面に接触させ、溶液の温度勾配により生じるYBCOの過飽和度を利用しエピタキシャル成長させる方法である。 これまで、銀の融点に比べ低い温度(900〜930℃)で配向銀基板上(Ag-Cu(0.1wt%)(210)<120>)に成膜を試みたが、種膜と基板の反応に起因する基板とYBCOの界面への溶液の潜り込みが生じ、LPE法で作製したYBCO膜にはクラックが生じていた。 そのため、この反応に密接に関係する溶液温度を低温下することで溶液の潜り込みの改善を試みた。 低温化は溶液に添加物(BaF2、Ag)を加え、さらに成膜環境を低酸素濃度にし行った。その結果、これまでの溶液温度に比べ数十℃低い820℃でYBCOがエピタキシャル成長する溶液を確認した。 そして、880℃で配向銀基板上にLPE法により成膜を試みたところ、溶液の潜り込みの無い成膜が可能であることを確認した。この時、30分の成膜時間でYBCOの膜厚は5μmであった。問題であった潜り込みが改善されたのは、低温化により配向銀基板とYBCOの反応が抑制されたためと思われる。