エポキシ含浸超電導巻き線において発生する遅れ破壊による機械的擾乱

Mechanical disturbances in epoxy impregnated superconducting windings induced by delayed fracture


三菱電機 先端総研A,大阪大学 工学部B

妹尾和威A,尾形英輝A,西嶋茂宏B


  NMRなどの高磁場マグネットにおいては、永久電流モードでの稼働時にクエンチを生じるものがあると報告されている。また、一般的な密巻含浸コイルでも、定格電流達成後しばらくしてクエンチを生じるものがある。この種のクエンチの原因は、遅れ破壊と考えられる。遅れ破壊は、非常に少ない頻度の破壊を伴いながら、コイル内部応力状態が長時間の間に変化する現象である。本研究においては、実験的にこの種の現象を調査した。実験では、巻き線模擬サンプルに静荷重を印加してヤング率、遅れ変形、および機械的擾乱の関係を調べた。その結果、ヤング率の小さいサンプルほど変形量が大きく、遅れ破壊が良く発生することが明らかになった。 最後に、この種の遅れ破壊に起因する変形がコイル中心磁場の時間変化に与える影響について検討した。遅れ破壊により巻線部の体積は縮小していく。即ち、自己インダクタンス、言い替えれば磁束量は増加していく。NMRなどでは、永久電流モードに移行してしばらくの間磁場が暫増する(decayではない)ことが報告されている。本研究の結果、この種の磁場の時間的不安定性も遅れ破壊に起因していると推定した。