Bi2223銀シース高温超伝導線材の異方的電流輸送特性とスケール則:統計モデルによる解析


九大院シス情A,九電B, Univ. of Wisconsin-MadisonC
@木須隆暢A,岡元洋B,David LarbalestierC


  良く知られているように、高温超伝導体では二次元的結晶異方性に起因する通電特性の異方性が顕著である。すなわち、印加磁界のテープ面に対する成分によって通電可能な電流値や交流損失は著しく変化する。したがって、応用機器の設計にあたってはこの異方性を考慮した設計が不可欠となるが、そのためには温度磁界によって複雑に変化する異方的電流輸送特性を正確に記述する理論の提出が重要となる。また、異方性は線材の結晶学的特性とも密接に結びついているため、材料評価の観点からも異方性の評価は重要である。 我々は、ピン力に統計分布の概念を導入することによって、高温超伝導体の電流輸送特性を評価することに成功している。本方法によれば、電界―電流密度特性より、ピン力分布ならびにその熱力学的特性を、巨視的ピン力に基づき評価することが可能である。本研究では、電界―電流密度特性の磁界印加角依存性について系統的に測定を行い、測定結果より抽出されるピン強度ならびにその統計分布に関する考察を行う事によって、Bi2223銀シース線材の異方性の決定要因とその記述法を明らかとする。 本方法によれば、最小限度の測定結果を基に、角度依存性を予測することが可能となる。また、ピン力のスケール特性から、任意の磁界、磁界印加角における電界―電流密度特性を記述することが可能であると共に、測定範囲外の特性を予測することも可能となる。さらに、仮に材料の結晶学的特性が向上したとして、最終的巻線構造においてどの程度のパフォーマンスの向上が見込めるかといった、材料特性に対する応用サイドからの要求の具体的目途といったものも立つ。すなわち、材料側と応用側の両者が密接に結びついた評価が可能となる。