DRHQプロセスによる新しいNb3Al多芯線材


金材技研
@菊池章弘,飯嶋安男,井上廉


  急熱急冷・変態法Nb3Al線材は、Ti添加Nb3Sn等の実用高磁界用線材と比較して、格段に優れた特性を有する。しかし、そのTc及びHc2はそれぞれ17.8K及び26Tであり、化学量論組成比のNb3Alと比較すると、いづれの値も明らかに低い。前駆体線材中のNb/AlフィラメントにおけるNbとAlの組成比は、Nb:Al=3:1の化学量論組成であり、また、急熱急冷処理後の過飽和BCC固溶体中の組成比も、ほぼそれと同様である。つまり、化学量論組成比からNbに富んだ組成へのズレは、過飽和BCC固溶体相からA15相へ変態する際に発生する。800oC付近での変態によりA15相結晶粒内に挿入される積層欠陥は、多数がAlに富んだレイヤーであり、その他のドメインがNbに富んだ組成へ移行することに由来する。組成のズレの程度は、平衡状態における各温度での組成比に律則される。そこで今回、過飽和BCC固溶体相からA15相への変態を、高温短時間で実施することを試みた。我々は、この新しいプロセスをDRHQ(double rapidly-heating/quenching)法と呼ぶ。DRHQ法によると、Tcは約18.5 K、Hc2は約30 Tまで上昇したA15相を析出させることが可能である。最も注目される結果は、20 T以上の高磁界下におけるJc-B特性であり、例えば、4.2 K、25 Tで、約200A/mm2のJcが、Ge等の第3元素添加を行わないで得ることができる。