Bi-2223高温超伝導線材の伸び歪み特性

Transport properties of Bi-2223 HTS tapes under the influence of tensile strain


九大院シス情A, University of TwenteB
@木須隆暢A, Hans van EckB, Bennie ten HakenB, Herman H.J. ten KateB


  線材の機械特性は、応用機器の作製にあたり、把握すべき重要な基礎特性である。高温超伝導多芯線材は、脆性の高い酸化物フィラメントを、柔らかな金属で包み込んだ構造を有しており、強度や熱膨張率などの機械的特性がが著しく異なる二つの材料の複合材という特徴を有している。その結果、歪みに対する線材の機械的応答は複雑であると同時に、臨界電流特性の変化は従来材料と大きく異なる。注意すべき点は、通常線材を引っ張ることで歪みを加えるが、その際に線材内のフィラメントそのものの歪みを直接観測する事は困難であり、線材全体の見かけ上の歪みを得ているに過ぎない点である。前述の通り、高温超伝導線材が複合材である点を考慮すると、観測される歪み量が、必ずしもフィラメントのそれとは一致しない可能性が大きい。臨界電流-歪み特性をより詳細に調べることによって、複合材としての線材の局所的機械特性をより正確に把握できると考えられる。しかしながら、そういった点に関する考察はこれまでほとんど成されていない。さらに、高温超伝導線材では、臨界電流値だけでなく、抵抗転移の急峻さを示すn値の変化も巻線のパフォーマンスに大きく影響することから、通電特性そのものに及ぼす歪みの影響を検討する必要がある。にもかかわらず、従来の研究は、ある電界基準で定めた臨界電流値の歪み依存性に関するものがほとんどであり、電界電流密度特性をターゲットにした研究は見あたらない。 本研究では、臨界電流―伸び歪み曲線で観測される長いtail領域に着目し、線材の機械的破壊特性をモデリングする事を試みる。さらに、電界―電流密度特性に対する歪みの影響について、前述のモデルを電気特性に対して拡張し、通電特性の歪み依存性についても同時に記述できる事を明らかとする。